バックナンバー: 2007年9月アーカイブ

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【癒しのことば】Vol.797   2007/9/25       

                                                 総発行部数:15,092部

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 「エリジウム(楽園)とは、
  すぐ隣の部屋のようにそばにある」

            -- エミリー・ディキンソン(アメリカの詩人)--

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 先日、テレビのクイズ番組で、
 「メーテルリンクの童話劇、『青い鳥』のモデルになった鳥は何?」
 というような問題が出ていました。

 もちろん『青い鳥』の内容はよく知っていますが、どんな種類の鳥がモデル
 になっているのかまでは考えたことがありませんでした。

 チルチルとミチルが、過去や未来の国に大冒険をして、やっと幸せの青い鳥
 は自分の家の鳥かごのなかにいると気づいたのです。

 青い鳥は幸せの象徴なのです。

 何となくありふれた鳥ではないような気がしました。
 孔雀とか九官鳥とか、まったくみつからないことはないけれど、手に入れる
 ことは難しい鳥。
 
 もし手元にいたら、絶対に放したくないような珍しい鳥。
 そんな種類の鳥ではないでしょうか。

 ......ところが、正解はハト。

 それも、日本なら、だいたいどんなところにも群れを成しているキジバトで
 す。
 
 ちょっと拍子抜けしたと同時に、なるほどな、とも感じました。

 私たちは、『幸せ』というと、ついつい何か特別で、手に入れることはなか
 なか難しいものだと考えてしまいがちです。

 一生懸命にがんばって、何とか手に入れたら、絶対に手放すものかと大事に
 カゴにしまっておきたいもの。

 でも、本当の『幸せ』とは、もっと身近なところにあって、いつでも私たち
 が触れることができるようになっているのではないでしょうか。

 近くの公園へ行って、ポップコーンでも撒いてみれば、いくらでも寄ってく
 る、あのキジバトのように身近な。
 でも、いつもはその存在に気がつかないような......

 そう、ためしに公園へ行ってキジバトを見てみても、とてもこれが幸せの青
 い鳥だとは思えない方だって多いのかも知れません。


 チルチルとミチルは、さまざまな大冒険をして青い鳥を探しましたが、世界
 中のどこにもみつけることはできませんでした。

 だけど、自分の家に戻ったら、すぐに自分たちが飼っていた鳥が青い鳥だっ
 たことに気づきましたね。

 今までずっと一緒にいた鳥なのに、どうして青い鳥に変わってしまったので
 しょうか?

 それはきっと、チルチルとミチルが、数多くの困難を乗り越え、いろいろな
 ことを学び成長したから、見えてきたことなのでしょう。


 幸せは世界中のどこにもない。
 ただ、いつもの生活、身近な人、住んでいる場所などのなかにこそある。
 いろいろな経験が、それを見る目を養ってくれる。

 『青い鳥』には、そんなメッセージが込められているのでしたね。

 改めて気がついたように思えます。

 
 そうですね。

 幸せは、自分の外側をどれだけ探しても、決してみつからないものです。
 幸せはいつも自分のなかにあり、自分の心が決めるものなのですね。

 がんばっていろいろな経験を経て、はじめて気づく人もいるし、ただ自分自
 身を生きることによって感じる人もいる。

 
 どちらにせよ、遠いところを探す必要はありません。
 自分を楽しむというところから、はじめてみましょうよ。

No.796 オーデン

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【癒しのことば】Vol.796   2007/9/20       

                                                 総発行部数:15,060部

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 「本当に生きたいのなら
  すぐ今から始めたほうがいい」

                   -- オーデン(イギリスの詩人)--

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 目を閉じてください。

 そして、あなたが過去に体験した、嫌な出来事、失敗、悔しかったことなど
 を思い出してみてください。

 どうでしょうか?
 
 何を感じましたか。
 身体は、どんな反応をしたでしょうか。

 ひょっとしたら、首から後頭部のあたりにかけて、後ろに引っ張られるよう
 な感覚があった方もいらっしゃるかも知れません。

 何か見えない手で、後ろの方へ吸い寄せられるような感じです。

 少なくとも、意識はとても前には向かず、後ろ向き、後ろ向きになってしま
 うでしょうね。


 では、次に、過去の楽しかったこと、成功したこと、何かをやり遂げたこと
 などを思い浮かべてみましょう。

 今回はどんな感じがしますか?
 意識は、前? 後ろ?

 ......残念ながら、やはり後ろの方へ意識と身体が向いてしまう人が多いでし
 ょう。

 いくら楽しいことでも、過去は過去。
 思い出すということは、後ろ向きになってしまうということになるようです
 ね。

 それでは目を開けて、一度、深呼吸をしてみましょう。

 
 さあ、いよいよ今度は、未来のことを思い浮かべてみます。

 目を閉じて......

 試しに、あなたが今やりたいと思っていること。
 それがうまくいっていないという場面を考えてみてください。

 失敗したり、思わぬ邪魔が入ったりして、ガックリとしているような場面で
 す。

 未来のことですが、いかがでしょう。

 意識は前に向きましたか?
 それとも?

 たぶん多くの人は、意識や身体が、下の方へ落ち込んでいくような感じを受
 たでしょう。
 肩や背中にズッシリと重荷が落ちてきて、下へ下へと押し下げられていくの
 です。

 なかには、今度も過去を振り返ったときと同じように、後ろの方へ引っ張ら
 れてしまった方もいるでしょう。


 過去(それがたとえ喜ばしいことだとしてもも)。
 未来の失敗への予感。

 どうやらそこに注意を向けていては、いつまでたっても前に進んでいくこと
 はできなようですね。


 では、未来の成功を思ってみてはどうでしょう。

 目を閉じて、あなたの夢が叶った、仕事で大成功を収めた。
 そんなところを想像してみましょう。

 いかがでしょう。
 今度は、意識も身体も前に向いたという方が多いのではないでしょうか。

 ......あと一息。

 夢が叶った、成功しているシーンを、本気で信じてみるのです。
 やりたかったことを達成して、心からの喜びを感じている自分を、ありあり
 とイメージしてみるのです。

 ほら、自然とあなたの意識も身体も前を向いているでしょう。
 今すぐにでも、前に進んでいきたいという感じがしてくるでしょう。


 後ろ、下、前。
 どこに行くのもあなたの自由です。

 ですが、どうせなら前に向かって進んでいくことを選択してください。

 覚えておいてくださいね。

 あなたが今、どう生きるかが、あなたの未来を創り出していくということを。

No.795 岩本泰波

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【癒しのことば】Vol.795   2007/9/10       

                                                 総発行部数:15,011部

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 「『思いこみの強さ』と、
  『信じることの深さ』とは、まったく別のことである」

                     -- 岩本泰波(宗教学者)--

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 柱の角に足の小指をぶつけたときは、思わず、 
 『痛い!』
 と叫んでしまいますね。

 別に叫んだからといって、小指の痛みがどうなるものでもないとは思うので
 すが......

 いえいえ、口に出して『痛い!』とか『痛て!』などと言うと、本当に少し
 痛みが和らぐのです。

 信じられないのでしたら、今度、どこかを強くぶつけたときに、何も言わず
 にじっと我慢してみてください。

 きっと、いつもより痛みがじわじわ広がってくるはずですよ。

 そして、その後、『痛い!』と言ってみると、急に痛みが少し収まったよう
 な気がするはずです。

 暑くて暑くてたまらないときにも、思わず『暑い』と口に出してしまいます
 よね。

 これも同じ原理で、『暑い、暑い』と言うと、確かにちょっとだけ暑さがど
 こかへ出て行くように思えます。
 
 こんなふうに人間は、自分の痛みや感情を誰かに話すことで、抱えていたも
 のを分散できるようになっているのかも知れません。


 実は、人間のほとんどの悲劇は、自分の内側に痛みや強い感情、苦しみや疑
 惑などを押さえつけているところからはじまっているのです。

 たとえば、シェークスピアの四大悲劇のひとつ『オセロ』でもそうです。

 オセロは妻の貞操への疑いを耳打ちされ、その疑惑は誰にも相談することが
 できず、どんどん大きく膨らみ、やがては強迫観念となっていきます。

 その強迫観念に苦しめられ続けたオセロは、とうとう何の罪もない妻を殺害
 してしまい、自らも命を絶つことになってしまうのです。

 もしもオセロが、妻に、ことの真相を尋ねてみていたら......
 誰かに悩みを打ち明けることができていたら......

 きっと、この悲劇は起こることもなかったでしょうね。


 人は、人と自分の苦しみを分かちあうことによって、もっと幅広い観点で見
 ることができるようです。

 自分ひとりで、見えない不安と戦っているという思いも消し去ることもでき
 るのです。

 悩みや問題を抱えているときの、いちばん良い解決策は、とにかく誰かに話
 してみるということなのでしょう。

 正しい答えは返ってこないかも知れません。
 良いアドバイスもないかも知れません。

 でも、少なくとも、内側に潜んでいた黒いエネルギーは、外に吐き出すこと
 はできるはずです。
 そのエネルギーの塊が、どんどんと育っていくことを防ぐことはできるはず
 です。

 暑いときには、『暑い!』と言ってみればよいのですよ。


 苦しみ、疑念、怒り、悲しみ。
 そんないらないエネルギーは、さっさと追い出して、自分のなかをキレイに
 しましょう。

 
 空いたスペースには......

 もちろん、『自分を信じる』という光のエネルギーでいっぱいにするのです
 よ。

No.794 ゲーテ

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【癒しのことば】Vol.794   2007/9/05       

                                                 総発行部数:14,993部

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 「わたしには幸運の女神の望みを受け入れる準備ができている」

                 -- ゲーテ(ドイツの詩人・小説家)--

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 もしも、乗っていた船が難破して、海に放りだされるようなことがあったと
 したら......


 一番良くないのは、あわてふためいて、とにかく泳いで助かろうとすること
 だそうです。

 闇雲に泳ごうとしても、人間は、それほど長い時間は泳いで入られません。
 たとえ陸地が見えていたとしても、辿り着く前にまず体力が尽きてしまうで
 しょう。

 なまじ泳ぎに自信がある人ほど、何とか泳いで逃げようとするのですが、じ 
 たばたすることは、最悪の選択だと言えるようですね。


 逆に、あまり泳ぎが得意ではない人ほど、助かる確率が高くなるということ
 です。

 なぜなら、そんな人たちは、泳いでどこかへ行こうということはあきらめて、
 船の残骸や浮木などに、つかまって浮いていようとするからです。

 いくら待っても救助が来ないようなら、どっちみち助からないのです。

 それならば、泳ぎ疲れて溺れてしまうよりも、少しでも長くその場でじっと
 して助けを待っている方が、発見されて助かる見込みも多くなるはずです。

 
 自分の力でがんばって泳いで逃げようとする人ほど、よけいに早く力尽きて、
 ただ成り行きに任せて、海に抵抗せずじっとしている人ほど助かりやすくな
 る。
 
 皮肉なようにも思えますが、そんなものなのかも知れません。


 人生においても、ある場面では、同じことが言えそうです。

 もちろん、自力でがんばって問題を解決しようと努力することはすばらしい
 ことです。

 でも、私たちは、問題を解決しようとがんばればがんばるほど、ますます苦
 しくなっていくことだってあるようです。

 なぜなら、「がんばらなければならない」と思えば思うほど、目の前の問題
 が大きくなっていくからです。

 そして、がんばっているうちに、いつしか、何のために問題を解決するのか
 ということを忘れて、がんばることが重要だと思うようになってしまってい
 たりするのです。

 知っておいていただきたいことは、
 『何かに抵抗しているあいだは、その何かはいつまでもなくなることはない』
 とうことです。

 物事が存在するためには、エネルギーが必要です。
 
 問題に抵抗することで、問題の存在を認め、一生懸命にそこにエネルギーを
 注ぎ込んでいることになるのです。
 その結果、問題は、ますます大きくなっていきます。

 そうですよね。

 問題に抵抗するエネルギーがあるのなら、あなたの人生をもっと良くするこ
 とに費やしてみてはいかがでしょうか。

 そこにこそ、本気でがんばる値打ちがあるのです。


 ......と、これは、以前にも書いたことがありましたね。

 ついでにこれも、覚えておいてください。


 太陽はいつも輝いています。

 日陰になるのは、ただ雲があるからです。
 暗いところにいることを嘆いたり、雲をどこかへやろうとがんばっていては、
 疲れるだけです。

 雲が流れていくのを待つか、自分が太陽の見えるところまで移動すれば、そ
 れでいいことなのですね。


 そう、この世界は、太陽のように、いつだってあなたに幸運の光を当ててく
 れているのですよ。
 
 あとは、あなたが自分が幸せになることを許してあげること。
 もっと楽に生きることを受け入れてあげることだけなのですよね。

No.793 ラルフ・W・エマソン

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【癒しのことば】Vol.793   2007/9/04       

                                                 総発行部数:14,997部

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 「人生はすべて実験である。
  実験を重ねれば、それだけいい人生になる」

         -- ラルフ・W・エマソン(アメリカの詩人、思想家)--

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  『A』  『F』  『3』  『8』


 表にアルファベット、裏に数字が書いてある4枚カードがあります。

 このカードを作った人は、
 「『A』の裏には、必ず『3』と書いてあるよ」
 と言っています。

 それが本当のことかどうかを確かめるには、最低限、どのカードをめくって
 みればいいでしょうか?


 ......という問題に対して、ただしく答えられる人は、ごくわずかだそうです。


 1枚だけ? それとも2枚?
 あるいは全部のカード?

 『A』のカード、それに『F』もかな......?

 どう考えたらいいのかわかりにくくて、すぐには答えられないですよね。


 ところが、カードを以下のように変えてみたらどうでしょうか。


 『16歳』  『25歳』 『コーラを飲む人』  『ビールを飲む人』

 
 表には年齢、裏には今、何を飲んでいるかがわかるようになっています。

 この場合は、
 「未成年者は、ビールを飲んではいけない」
 ということを確かめてみます。

 さて、最低限、どのカードをめくってみればいいのでしょうか?

 という問題なら、ほとんどの人が正解してしまうそうです。


 これは何かの心理学の本で読んだことなのですが、なるほどと思いました。

 
 まず、『16歳』のカードはめくってみなければなりませんよね。
 もし裏に、『ビールを飲む人』と書いてあればアウトなのですから。

 『25歳』
 『コーラを飲む人』

 のカードについては、コーラには年齢制限はありませんし、青年に達してい
 れば、コーラを飲もうとビールを飲もうと自由なのですから、特にめくって
 確かめる必要はありません。

 『ビールを飲む人』

 これは、絶対にめくって年齢を確かめなければなりません。


 というわけで、正解は、『16歳』と『ビールを飲む人』の2枚だというこ
 とになります。


 実は、アルファベットと数字のカードの問題も、年齢と飲み物のカードの問
 題も論理的には、まったく同じ構造をしています。

 ということは、最初の問題の正解も、1番目と4番目のカードの2枚をめく
 るということになります。


 同じ問題でも、問われ方によって簡単に答えられるものと、抽象的すぎてな
 かなか答えを出せないものとがあるようですね。


 「どうやったら成功できるだろうか?」
 「自分の夢を叶えられるか?」

 抽象的な問いを発していても、なかなか正解がわかりませんよね。
 あいまいで、どの道を進めばいいのか見えてはきません。


 「営業成績を20%アップさせるためには、毎日、何軒くらい訪問すればいい
  だろうか?」
 「ギタリストになるには、今、この瞬間、何をしていればいいのか?」

 問いかけをちょっと具体的にするだけで、何となく答えが見えてくるような
 気がしますね。

 
 立ち止まっているのもいいけれど、とにかく一歩足を踏み出してみればいい
 じゃないですか。

 あなたの夢に向かって。

 失敗しても、うまくいっても、どっちにしろ、それだけもっと大きな夢に近
 づいているということなのですから。

No.792 木村和巨

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【癒しのことば】Vol.792   2007/9/03       

                                                 総発行部数:15,002部

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 「この苦しみは天が与えてくれた試練だ。
  おれにへこたれるなと言っているんだ」

                     -- 木村和巨(三貴社長)--

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 中学生の頃、私は釣りに凝っていて、よく弟とふたりで海釣りに出かけたも
 のでした。

 当時は、住んでいた家から30分ほど電車に乗れば、防波堤のある絶好の釣
 り場へ行けたのです。

 釣り方は、主に投げ釣りです。
 錘をつけた釣り針を、リールつきの竿で遠くに投げ込み、海の底を引きなが
 ら獲物が掛かるのを待つというものです。

 エサには、ゴカイというミミズのような虫を使います。
 今ではとても触ることすらできませんが、当時は、平気だったのですね。

 ある日、エサを釣り針に付けようとしていたときに、誤って錘ごと針を落と
 してしまい、針が人差し指の先に刺さってしまったことがありました。

 「痛い!」

 思わず声を上げてしまうほどの、熱い衝撃です。

 見ると、指の腹を貫いて、針の先が顔をのぞかせているのです。
 あっという間に血がどんどん滴り落ちていきます。

 私は、あわてて針を抜こうと、針の根本を持って必死で引っ張りました。
 痛みで頭は真っ白、大変だという思いで全身パニック状態。
 怖くて指を見ることもできず、ただグイグイと針を引っ張ってみます。

 ところが、針はなかなは抜けてはくれません。
 それどころか、引っ張れば引っ張るほど、痛みは激しくなっていくようです。
 どうしていいかわからず、泣きたいような気分です。

 「オイ、そんなことしちゃダメだ!」

 そのとき、近くにいたおじさんが、いきなり私の手首を掴みました。
 そして、持っていたペンチのような工具で、私の指先に食い込む針の根本を
 プツンと切ってくれたのです。
 
 その針の先の方を持って引っ張ると、あっさりと針は抜けてしまいました。

 そうなってから、やっと思い出しました。
 釣り針の先には、掛かった魚が抜けないように、先端と逆方向にかえしとい
 う尖った突起がつけてあるのです。

 指先に刺さった針を抜こうと思っても、抜けないどころか、かえしが肉に食
 い込んでさらに傷が大きくなるばかりだったのです。

 冷静になって考えると、そんなことは充分に承知していましたし、落ち着い
 て行動していれば、それほどの痛い思いをすることもなかったのでした。

 ......だけど、そのときは、とにかく焦って、針を抜くということしか考えら
 れなくなっていたのですね。

 針先に押してみれば、簡単に抜けたはずの針でも、何とか引き抜こうとがん
 ばって、余計に痛みを増し、傷を大きくしていたのですね。


 最近、ふと思いました。

 人生でも同じようなことをしているのではないかと。

 苦しい状態になれば、嫌な出来事が起これば、そこから逃げることばかりで
 頭が一杯になり、かえって自分を追い詰めてしまっている。

 落ち着いてよく考えてみれば見えてくるはずのものを、目の前のことだけを
 見ていて気がつかない。

 本当はもっと単純なことなのに、自分で難しくしてしまっている。


 生きていれば苦難や不運は、必ずやってきます。
 そこから逃げ出すにしろ、立ち向かうにしろ、ただその苦しみだけを見てい
 るのなら、余計に辛くなってしまうのではないでしょうか。

 苦難に出会ったら、とにかく一度深呼吸をしてみようと思います。

 どうしたら、この問題をいちばん良い形で乗り越えることができるのかを、
 心を落ち着けて考えてみたいと思います。


 苦しみは天から与えられたメッセージ。
 自分がより大きくなるためのチャンス。

 それさえ思い出すことができれば、すべてはうまくいくのでしたよね。

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