「2007年10月」のアーカイブ

No.804 J・マーフィー

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「楽天主義も悲観主義も一つの思考習慣によるものです。
楽天家の人生が楽しく、悲観主義者の人生が暗いのは当然です。どちらもそれを望んだからです」

– J・マーフィー(アメリカの思想家)

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もうずいぶん昔の話ですが、しばらく工場でアルバイトをしていたことがありました。

電気製品の工場で、流れ作業で組み立てていく仕事です。

現場には、いくつかの班があり、班単位で休憩したり食事に行ったりします。
午前と午後に、ほんの少しだけの休憩時間があり、トイレに行ったり、休憩室でジュースを飲んだりして身体を休めていました。

同じ班に、私より少し年長のおじさんがいました。
その人とは、アルバイトをはじめたのが同時期だったこともあり、よく並んで座っていろいろと話しをしたものです。

おじさんは、毎日、午前も午後も休憩時間には、同じ種類の缶コーヒーを飲んでいました。
休憩室にある自動販売機で買った缶コーヒーです。

あまりにも毎回同じものなので、あるとき尋ねてみました。

「その缶コーヒー、よっぽど好きなんですね」

ところが、おじさんの返事は、ちょっと意外なものでした。

「ああこのコーヒーか? 俺はあんまり好きじゃないよ。
甘ったるいのは苦手なんだ」

「じゃあ、どうしていつも同じ種類のコーヒーを飲んでいるの?」

「どうしてって……
どうしてだろうなあ」

よく聞いてみると、おじさんは自動販売機にお金を入れると、ついつい一番左にあるボタンを押してしまうというのです。
クセのようなもので、気がつくと、そのボタンを押してしまっているそうです。

自動販売機には、微糖やブラックのコーヒーもあるのに、おじさんは、いつでも砂糖がたっぷりと入った缶コーヒーを買ってしまっているようです。

それ以来私は、、おじさんがその缶コーヒーを飲んでいるところを見ると、からかうようになりました。

「あ、またそのコーヒーを飲んでいる」
「あれ? 甘いのは嫌いじゃなかったの?」

そのたびにおじさんは、少し悔しそうに首をひねります。

「本当だ、またこのコーヒーだ」
「何で、いつもこんな甘いのばっかり飲まなきゃいかんのだ」

結局、数ヵ月後に私が退社するまで、おじさんは、毎日、2回の休憩時間のたびに、あまり好きではないコーヒーを飲んでいました。

それからかなりの年数が経ちますが、ひょっとしてまだ、その会社にいるのなら、今も、同じ甘いコーヒーを飲み続けているのかも知れません。

おじさんは、そのコーヒーは好きではなかったのです。
でも、自動販売機の同じボタンを押し続けていたので、いつでもそのコーヒーが出てきていました。

ボタンを押したのは誰でしょう。
そのコーヒーを選んでいたのは誰でしょう。

誰でもない。
おじさん本人ですよね。

自動販売機の、同じボタンを押せば、いつでも同じものが出る。
当たり前のことです。

もし、違うコーヒーを飲みたければ、違う位置にあるボタンを押せばよい。
これも当たり前といえば、当たり前のことですね。

人生で同じ選択を繰り返していれば、いつも同じ生き方になる。
当たり前のことです。

もし、違った生き方をしたければ、違ったことをしなければならない。
新しい選択、別の行動。
これだって、当たり前といえば、当たり前のことです。

今の生き方が気に入らないのなら。
もっと楽しく生きたいと思うのなら。

『楽しく生きる』という選択をしてみるだけのことですよね。

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2007年10月19日
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プロフィール
大阪在住のライターです。
メルマガや超短編なども書いています。
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