No.468 ウィリアム・サローヤン
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「いちばん幸せなのは、幸せなんて特別必要でないと悟ることだ」
– ウィリアム・サローヤン(アメリカの小説家)–
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ロシアの文豪、トルストイが残した創作民話に、『世界で一番幸せな人』という作品があります。
ある国のお姫さまが重い病気にかかりました。
どんなお医者さまでも、お姫さまを治すことができず、とうとう有名な占い師を招いて見てもらうことになりました。
すると占い師は、
「お姫さまは、ただの病気ではなく、心の病にかかっているようじゃ。
治すには、この国で一番幸せな人が着ているシャツを手に入れ、お姫さまに着せることが必要じゃ」
と告げるのです。
王様は、家来たちに、その国で一番幸せな人を見つけるように命じました。
ある家来は、きっと一番のお金持ちが一番幸せなのだろうと考え、黄金で飾られた豪華な屋敷に住んでいる人のところを訪ねました。
「あなたは、とても立派な家に住んで、たくさんの財宝を蓄えておられるよ
うだ。
さぞかし幸せに生きておられるのでしょうね」
ところが、お金持ちは、こんなことを言うのです。
「何をおっしゃる。
私は、自分の財産を管理するのに、いつも大変な思いをしているのです。
盗まれはしないか、災害に遭ってすべてを失いはしないか、と夜も眠れぬくらいです。
とても幸せなど感じている余裕はありませんよ」
別の家来は、国で一番美しい人のところへ行きました。
「あなたは、人もうらやむ美貌を持っている。きっと、とっても幸せでしょう」
「いいえ、そんなことはありません。
私は確かに、見かけはキレイかも知れません。
しかし、そのために外見ばかりを気にする人や、見かけに惑わされる人ばかりが寄ってくるのです。
誰も、本当の私のことをわかってはくれないのです」
美しい人も、自分は幸せでないと言うのです。
そんなことの繰り返しで、家来たちは、なかなか幸せな人に出会うことができません。
夕暮れも近づいていた頃、ひとりの家来は、貧しい人たちが暮らしている路地裏を、とぼとぼと歩いていました。
こんなところに、とても国で一番幸せな人などいるわけはないと思っていたのですが、他にもう行く当てもなかったのです。
すると、一軒のあばら屋から、こんな声が聞こえてきました。
「今日も一日、忙しかったけど何とか無事に終わったぞ。
ああ、私はなんて幸せなんだ。
住む家もあるし、今日は食べるものもある。こんなに幸せ者は、他にはいないだろうな」
家来は、あわてて、そのあばら屋に飛び込びました。
「とうとう国で一番幸せな人を見つけたぞ!
お姫さまの病気を治すために、あなたのシャツが、是非とも必要なのです」
だけど、家来がその人をよく見てみると、裸同然で、まともなシャツも持っていないような人だった、ということです。
私たちが、自分を不幸だと思ったり、人生に不満を感じているときは、たいていが「ない」ものを見ているときのようです。
お金が足り「ない」から、幸せになれない。
私には、あの人のような才能も力も「ない」から、ダメなんだ。
何がしたいのかわから「ない」。
「ない」ものがあるから、それを手に入れるために、がんばったり知恵を絞ったりして、成長していくことができるのだと考えることもできるでしょう。
でも、「ない」ものばかりを見ている限り、たとえそれを手に入れたとしても、すぐにまた別の「ない」ものが見えてくるでしょう。
持てば持つほどもっと欲しくなるものですし、がんばって手に入れたものは、がんばって持っていないと、失ってしまうように思えます。
どんなに才能に恵まれていても、経済的に豊かでも、「ない」ものに意識が向いている限り、お姫さまのように、心から幸せを感じることはできないでしょう。
逆に、自分に「ある」ものを考えてみたらどうでしょうか。
得意なこと、人より少しでも優れているところが「ある」。
立ったり、歩いたり、考えたり、喋ったり、できる力が「ある」。
食べたり、ときには欲しいものを手に入れるだけの豊かさが「ある」。
もっといろいろ自分に「ある」ものを探してみたら、どんな気持ちがしてきますか?
お姫さまは、たとえボロボロでも、「ある」ものを見ていた人からもらったシャツを着てみたら、どんなに自分が恵まれていたのか、ということに気づくことができたのでしょう。
きっと、心の病から解放されて、幸せになったでしょうね。
お姫さまではなくても、私たちだって幸せになれますよ。
私たちは、自分が思うよりもずっと豊かなのです。
「ある」ものに意識を向けると、それが見えてくるでしょう。
まず、今、ここに生きていて、自分という存在が「ある」のです。
自分のやりたいことを、やりたいと思う心が「ある」し、そこに向かって進んでいこうという気持ちも「ある」のです。
そのために必要な力も「ある」し、無限の可能性も「ある」はずです。
もちろん、幸せだって、ずっとここにあったのですよね。
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2003年12月01日 コメント&トラックバック(0) | トラックバックURL |
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