No.708

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【癒しのことば】Vol.709 2006/11/16       

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 「選択しなければならないのに選択しないのは、それ自体がもう選択してい
  ることになる。」

         -- ウイリアム・ジェームズ(アメリカの心理学者)--

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 これも前に書いたことがあるのですが、落語で、こんな話を聞いたことがあ
 ります。

 
 ある男が、大富豪のところへ、お金持ちになる秘訣を教えてもらいにいきま
 した。

 はじめは渋っていた富豪も、男の熱心さに負けて、ついに秘訣を教えること
 になります。

 男は、さあ、どんな秘密を知ることができるのかと期待しますが、意外なこ
 とに、富豪は、庭に出て大きな樹を指差し、

 「あの樹に登ってみろ」

 と命じたのです。

 仕方なく、男は、言われたとおり樹に登りますが、いくら上っても、富豪は、
 「もっと、もっと」と、高く登るように命じます。

 そして、かなり高いところまでくると、今度は、横に伸びた枝にぶら下がり、
 横へ進むように言い、男はそれに従います。

 下を見ると、地面は、はるか彼方です。
 男は怖くて仕方がありあませんが、金持ちになりたい一心で、震えながらも
 両手でしっかりと、枝にぶら下がっています。

 そんな男に、富豪は、下からこう叫びます。

 「枝を持っている片手を離してみろ」

 男が躊躇していると、富豪は、

 「そんなことでは金持ちにはなれんぞ。 早く手を離せ!」

 と怒鳴るのです。

 恐々男は片手を離し、もう片方の腕だけで、樹の枝にぶら下がります。

 すると、さらに富豪は、
 
 「今度は、樹を持っている手の小指を外せ」

 と命じます。

 男が小指を話すと、「薬指を離せ」、「中指を離せ」と、次々に命令するの
 です。

 とうとう男は、人差し指と親指だけで、なんとか樹につかまっているだけに
 なってしまいます。

 富豪は、さらに命じます。

 「さあ、今度は、人差し指を離せ!」

 しかし、人差し指を離すと、こんなに高い樹の上から、真っ逆さまに落ちて
 しまいます。

 さすがに男も、そんな命令に従うわけにはいきません。

 富豪は、何度も、「人差し指を離せ!」と言いますが、男は、頑として、抵
 抗し続けます。

 「どうしても、この指だけは離すわけにはいかないのです!」

 それを聞くと、富豪は、にっこりと笑って、こう言いました。

 「そうだ、それこそ金持ちになる秘訣だ。
  お前が、がんばって握っている指の形を見てみろ」

 男が、よくよく自分の手を見てみると、人差し指と親指で丸をつくった形で、
 木の枝を握っています。

 それは、ちょうど、「オーケー」表すサインの形ですが、「お金」を表現す
 るときにも使う形ですね。

 「そうだ! どんなことがあっても、自分が握った金を離すのではないぞ。
  これこそが、お金が溜まり、金持ちになる秘訣じゃ」

 ……というオチになります。


 これは落語ですから、そこでなるほどと納得したり、笑ったりすればいいい
 のでしょう。

 でも、よく考えてみると、この男は、この後どうするのでしょうか。

 まあ、また枝を持ち直して、樹から下りてくるのでしょうが、私には、どう
 しても、いつまでも「お金」のマークを握りしめて、樹にぶら下がり続けて
 いる、情けない男の姿が浮かんでしまいます。

 自分では、一生懸命に、大切なものを守り続けているつもりなのに、それに
 縛られて、手を離すことができない。
 こんな樹に、いつまでもいつまでもしがみついたままでいるのです。

 
 ひょっとしたら、私たちも、同じようなことをしているのかも知れません。

 手放してみれば、自由になれるのに、一生懸命に、手を握り締めて、辛い、
 苦しいと、悩んでいる。
 
 思い切って、一歩、前に踏み出してみれば、道も開けてくるのに、今の場所
 を動くと危険だと、なかなか足を前に出すことができない。


 自由、愛、幸福、喜び……

 これらは、がんばって手に入れるものではなくて、はじめから自分のなかに
 あるものなのですよね。
 自分自身がそれを楽しむのを邪魔しているだけかも。

 そして、ただ握った手を離してみるだけで、手に入れることができるものな
 のでしょうね。

 これだって、自分が選択できるのですよ。

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このページは、shinが2006年11月16日 12:28に書いたブログ記事です。

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